超臨界の果てに
深海数千メートルの海底に、海底火山が存在することがある。
マグマオーシャンから海底の亀裂を経て、マグマが深海に噴出し
水蒸気爆発を起こしたりする。
この深海数千メートルの海底火山から噴出するマグマや熱により、
付近の水が超臨界状態に達する。
…超臨界状態ってなんだよ。
平たく言えば、水でもない、水蒸気でもない状態におかれた
水のことを言う。
加熱され水蒸気になろうとする水が、周囲の圧力と高温によって
水蒸気になることが出来なくなってしまう状態、それが超臨界だ。
とにかく高圧で高温で、水としての性質すらないというそんな状態。
…ところで水の性質って何って?
オマエ、高校のケミストリーの時間寝てたろ。
じゃあ復讐、もとい復習な。水は何原子からできていますか。
馬鹿にすんな、水素原子と酸素原子だろがボケって?
Correct。では、水素原子と酸素原子は電気的にどうなりやすい?
何だって、水素原子はプロトンになるから+に、酸素原子は
逆に−の電荷をチャージしやすい、でいいか?、か。
基本的に正しい。では、それら二つが組み合わさるとどうなるか。
トータルでは電気的に中性になって、安定、ってことだな。
だが、水は立体構造がちょっと曲がっていたりするので、
部分的に極性を有する。これを極性分子という。
この極性によって、水は分子量の割に高い沸点と融点を持つ。
メタンとか沸点、融点ともに低いだろ。
え、メタンが変なんじゃないのって?
それより分子量の高いエタンでも沸点は水以下だぞ。
ていうか水以外にこの分子量でこの沸点と融点の物質は存在しないの。
とにかく、水が高い沸点や融点を持つことで、極性溶媒でいろいろ溶かせる
ことなどで、生物が誕生したわけだ。
水が無かったら生物はほぼ存在しないね。
さて、超臨界に話を戻そう。
超臨界では水はその性質を失うわけだ。
つまり、水が水でなくなるってことだ。
当然普通の生物にとってはそんなところで生きていけるわけがない。
ところが、深海底の生物はこの状況にも耐えるらしい。
どういうメカニズムか分からないが、すごい方向に進化してるな。
摂氏4度の水の場合、氷と水の超臨界状態を作り出すにはものすごい圧力
が必要。地球上にはその状態は存在しないけど。
どこかの惑星を探査するとしよう。
その惑星にはものすごく深い海があるらしい。
とりあえずそれに耐える潜水艦でもぐってみる。
どこまでも潜っていって、ついに海底についた、と思った。
船長はあることに気になった。
なんか平たい。平たすぎる。
「まさか…」
それは人類が始めて目にする超臨界氷の姿だった…。
しかし、もっと驚くべき光景があった。
「穴があいている…」
そこから、見たことも無い生物が顔を出した。
そしてまた顔を引っ込めた。
…これはフィクションだが、深海10000mにさえ生命はいる。
きっとそんなわけの分からない生き物はいると思う。